クライアントやユーザーベースについて知らなければ、彼らが欲しがっているものや必要としているものを提供できる可能性は低くなります。すでにフォーカスグループやユーザーリサーチを実施されたことがあるかもしれませんが、アプリ開発の全体像やビジネスのトレンドは、ターゲット市場がコントロール出来ない要因によっても大きく変化します。
先日、2021年に見られると予想される技術的なアプリのトレンドをいくつか取り上げました。本記事では、Shopifyの主要なパートナーシップ、開発者の成功事例、シニアビジネス開発マネージャーへのヒアリングを行っています。
- 彼らが今後12ヶ月間に予測するアプリ開発ビジネスのトレンド
- これらの傾向がマーチャントにどのような影響を与えるか
- アプリ開発者がこれらの機会や課題をどのように活用するか
をご紹介します。
初めてShopifyアプリを構築しようとしているか既に経験があるかにかかわらず、2021年を通して心に留めておきたい9つのトレンドがあります。
Shopifyのマーチャントのためのアプリを構築する
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1. スマートなテクノロジーと少人数チームによるマーケティングギャップの橋渡しが不可欠である
Brian Peters, Strategic Partnerships Manager, Plus Technology Partnerships昨年と比較し、Shopifyマーチャントにとっての最大の課題の1つはマーケティングです。ブランド構築やインフルエンサーマーケティングから、広告やトラフィックの生成まで、効果的なマーケティングは成長のための重要な戦略であることに変わりはありません。ブランディングにとっては幸いなことに、マーチャントがマーケティングファネル全体でより良いマーケティング判断を下すのに役立つマーケティングテクノロジーが続々と登場しています。
マーケティングオートメーションプラットフォームは、テクノロジーと人間の創造性の間のギャップを埋め、マーチャントがよりスマートなマーケティング判断を下すことを可能にしてきています。これは、顧客を深く、個人的なレベルで理解し、チャネルとタッチポイントの間で点と点を結びつけることから始まります。
マーケティングオートメーションプラットフォームは、テクノロジーと人間の創造性の間のギャップを埋め、マーチャントがよりスマートなマーケティング判断を下すことを可能にしています。
Brian Peters, Shopify Strategic Partnerships Manager, Plus Technology Partnerships
マーチャントが自分たちの顧客が誰なのか(そして将来誰が顧客になる可能性が高いのか)を明確に把握することができれば、顧客がどこで何と交流する可能性が高いのかに合わせて、より洗練されたマーケティングワークフローを導入することができるようになります。
先進的なShopifyアプリエコシステムの中で展開されるマーケティングテクノロジーを用いることで、小規模なマーケティングチームと予算を持つマーチャントが採用しているマーケティング戦略は、より洗練されたものになるでしょう。
Shopifyマーチャント向けに開発しているデベロッパーは、マーチャントがSMS、動画、インフルエンサーやアフィリエイト、ライブ販売などの戦略でマーケティングの境界線を押し広げ続けることを期待していますが、一方で、メール、ユーザー生成コンテンツ、ダイレクトメールなどの実績のあるチャネルも研鑽し続けています。マーチャントが競争力のあるマーケティングの優位性を獲得しようとする中で、これらの領域でクロスチャネル技術を発揮する機会は依然として豊富にあります。
2. クロスプラットフォームアプリ普及の10年に
Riley Zammit, Developer Success Managerコンシューマーが所有するデバイスの数が増加しているため、アプリが複数のプラットフォームで存在感を発揮する必要性も高まっています。2021年以降、アプリ開発者はReact NativeやFlutterのようなクロスプラットフォームフレームワークの利用を増やし、製品を複数のプラットフォームで迅速かつ安価に市場に出すことが可能になると予測されています。
すでにReact Nativeのダウンロード数は2017年の週5万件から週50万件近くに増加し、GitHubでは9万8千件のスターを獲得しています。Flutterは2017年のリリース以来、GitHub上で111,000スターを獲得しており、比較的新しい市場であるにもかかわらず、非常に高い関心が寄せられています。
ユーザーのコミュニティが成長するにつれ、これらのフレームワークは成熟を続け、Apple Watch、Apple TV、ネイティブWindows、ネイティブMacなどのプラットフォーム上でより良いパフォーマンスとネイティブ機能を実現していきます。
2021年には、クロスプラットフォームアプリがユビキタスになるに伴い、UXスペシャリストの重要性が高まることも予想されます。
Riley Zammit, Shopify Developer Success Manager
2021年には、クロスプラットフォームアプリがユビキタスになるに伴い、UXスペシャリストの重要性が高まることも予想されます。
ただし、プラットフォーム横断をしながら優れたユーザーエクスペリエンスを維持するには、まだチャレンジが残りそうです。それには主に2つの理由があります:
1つは、ウェブサイトビルダーツールの爆発的な普及が、現在ウェブ上でデフォルトとなっている優れたデザインとUXの主な原因であること、もう1つは、クロスプラットフォーム技術のための類似ツールがまだ存在していないことです。
開発者や製品デザイナーは、サポートする必要のあるデバイスの違いを考慮する必要があります。ラップトップと Apple Watch の間の画面サイズやユーザーの利用方法の違いを考えてみてください。
高品質なUXを維持しながら、複数のプラットフォーム向けに構築することに慣れているアプリ開発者は、長期的に成功するアプリビジネスを構築する可能性が高くなります。
3. 今「ライブショッピング」の変革が起きている
COVID-19の期間中に加速したトレンドの1つは、1970年代から1980年代にかけて北米を含め世界を席巻したライブ・コールイン・ショッピングのテレビネットワークの進化版ともいえるライブ・ショッピングの成長です。消費者が自宅で買い物をすることが多くなってきているため、マーチャン商品に命を吹き込み、顧客とより個人的な交流を持つ方法を模索しています。
このように、ホームショッピングネットワークやQVC(Quality Value Convenience)のテレビチャンネルを現代的にアレンジしたものは、中国ではすでに数十億ドルの市場規模となっており、今後も世界的に成長が見込まれています。人気のある消費者向けプラットフォームはすでにこのトレンドに投資しており、ShopifyとTikTokは昨年正式に提携して、マーチャントや動画制作者向けのインフィード広告を作成しています。
視聴者を巻き込んでいる小売業者は、自社のウェブサイトやソーシャルメディアのアカウントでライブ販売の実験を始めており、よりインタラクティブな形式で視聴者を巻き込もうとしています。
また、アプリのようなテクノロジーソリューションを求める傾向が強まっており、ライブショッピングの体験を可能にすることで、このショッピングのトレンドを利用して新規顧客を獲得することができます。顧客とのインタラクションを向上させ、チェックアウト体験をシームレスにするソリューションを探しているのです。
4. サプライチェーンの多様化が重要に
Mario Ranasuriya, Strategic Partnerships Managerパンデミックの結果、加盟店が直面する最大の課題の一つは、サプライチェーンの混乱です。加盟店はサプライヤーとのコミュニケーションが困難になり、海外での生産や出荷の不足や遅延を経験してきました。これらの課題は、特に中国から製品(または原材料)を調達しているブランドに顕著で、パンデミックとは別に、地政学的な緊張にも悩まされてきました。
加盟店が直面する最大の課題の一つは、サプライチェーンの混乱です。
Mario Ranasuriya, Shopify Strategic Partnerships Manager
また、渡航禁止やソーシャルディスタンスの影響から、マーチャントはトレードショーや製造現場の訪問などの従来の方法で商品を調達することが制限されました。マーチャントは、実際のサンプルを見て製品の品質を評価したり、製造方法や環境の品質を評価したりすることができませんでした。
最近のこうした出来事により、サプライチェーン多様化の必要性が加速していることに対して、以下のアプローチが考えられます:
- 製造設備を自国に再度移転する
- 中国に代わる拠点の発掘
- デジタルソリューションを用いてサプライヤーの発掘とコミュニケーションを行う
またこれらのニーズは、現地調達、エシカル・ソーシング(倫理的調達)、サプライチェーンのトレーサビリティ、デジタルB2B市場など、新たなマクロトレンドも反映しています。
またアプリ開発者は、次のような課題に対応したアプリを開発することで、マーチャントが抱える以下の問題を和らげることができます:
- サプライチェーン・トレーサビリティ:工場から倉庫に至るまでのサプライチェーン全体をデジタル的に統合し、可視化することで、渡航や手作業によるトラッキングの手間を回避することができます。
- マーケットプレイスの統合:展示会の代わりに、加盟店をB2Bマーケットプレイスに接続することで、デジタル製品やサプライヤーの発見を可能にします。
- 製品開発: 3Dレンダリングアプリなどを用いて、物理的なサンプルを置き換えることでマーチャントとメーカーがバーチャルに協力して商品を開発することを支援
現在のコロナ危機は、マーチャントがサプライチェーンのバランスを見直し、より透明性、機動性、弾力性のあるサプライチェーンにする必要性を示しています。それはすでに、デジタル・イノベーションとソリューションのために熟した数十億ドル規模の世界的な産業であることも明らかにしており、2027年には370億ドルを突破する見込みです。
5. コンプライアンスの復活
Cindy Chan, ストラテジックパートナーシップ・マネージャークロスボーダー取引、オムニチャネル販売、アルコールや大麻などの規制産業に関連する複雑さ、地域の商習慣差、コンプライアンス上の負担は、過去5年間で大幅に増加し、マーチャントのリソースを消費し、新たな市場や商品への拡大計画を脅かしています。
2018年6月の米国最高裁判例「サウスダコタ州vs.ウェイフェア」からの新たな動きは、次のようなポイントから、税務・税関規制に広く影響を与えています:
- マーチャントオブレコード(MoR)サービスを提供するマーケットプレイスに納税義務の負担をシフト
- マーチャントの本拠地から顧客の所在地へと、売上税の判断が変更される。以前は、米国に本社を置く企業が物理的に本社を置く1つの州で申告していたのに対し、現在は顧客が居住する46の課税州と欧州の顧客が居住する欧州連合27カ国で申告しなければならないことを想像してみてください。
そのため、マーチャントは複数のコンプライアンス種別に沿うためのデータ複製に時間を費やし、財務の全体像を把握するためデータソース(銀行口座、在庫管理システム、売上、割引、諸々)の統合ができるターンキーのオートメーションサービスを探す必要が生じるでしょう。
マーチャントは複数のコンプライアンス種別に沿うためのデータ複製に時間を費やし、財務の全体像を把握するためデータソース(銀行口座、在庫管理システム、売上、割引、諸々)の統合ができるターンキーのオートメーションサービスを探す必要が生じるでしょう。
Cindy Chan, ストラテジックパートナーシップ・マネージャー
マーチャントのコンプライアンス対応に付随して、以下のようなニーズ・機会が見られるでしょう:
- コンプライアンス活動をフィードする統合情報ハブの作成
- 地域を超えた登録とファイリングサービスの自動化
- アルコールなどのニッチ産業に特化した非課税管理ソリューションとワークフローの作成
完全なコンプライアンス・ソリューションは、使いやすく、ロジックに柔軟性があり、市場全体で拡張できるほど堅牢で、さまざまな報告、調整、およびファイリングのニーズを満たしながら、リアルタイムのインサイトを提供できるものでなければなりません。
6. 店員によるオンライン小売の "ヒューマナイジング "を前面に打ち出す
Manit Jain, Strategic Partnerships Manager従来、顧客体験を中心においたブランド構築と成長を念頭に物理的な店舗での体験に依存してきたマーチャントは、2020年に大規模な混乱に見舞われました。店舗の一時的な閉鎖は、これらのマーチャントに悪影響を与えましたが、多くのマーチャントは、以下のようなサービスを提供することで迅速に適応しました:
- オンラインでの購入、店舗での受け取り(または路上での受け取り)
- ローカルデリバリー
- アポイントメント予約
- バーチャルクライアントリングを利用した顧客体験の向上
オンラインリテールをより「人間的な」ものにし、販売員が店頭での体験を提供するように、サービスを個々の顧客にパーソナライズされたものにしていきたいという願望もあります。2021年には、マーチャントはオンラインショッピング体験を向上させ、セールスチームが顧客と1対1でつながることを可能にする多機能アプリの需要がさらに高まることが予想されます。
Hero、Endear、Cazaamなど、オンラインショッピング体験に個人的なタッチを加える革新的なソリューションは、実店舗を持つ小売業者を対象としています。これらのアプリでは、店舗の従業員がライブテキスト、音声またはビデオチャットを介して顧客と対話し、写真を共有したり、商品を推薦したり、カレンダーを共有して一対一のアポイントメントを取ることを助けます。
またショッピング体験をパーソナライズし、マーチャントと顧客の間に人間的なつながりを作ることで、コンバージョン率を大幅に向上させることができます。例えば、Faherty、Credo Beauty、Jonathan Adler、UntuckitなどのShopifyのマーチャントはHeroと提携し、セラーがその知識や専門知識を顧客と直接共有できるようにしています。
オンラインショッピングの体験により温かみを生む、eコマースのイノベーションは、顧客体験の向上とブランドロイヤルティの構築を目指す小売業者の注目を集めることになるでしょう。
7. 単純なトランザクションから魅力的な体験への移行に焦点を当てる
世界最大手のブランドたちは、オンラインとオフラインのショッピングにおいて、しばしば信じられないほど深い溝を持っています。人々は、ブランドに対し料理やヨガ教室のような、より楽しくパーソナライズされたインタラクションを提供するオンライン体験を求め始めています。実際、2020年にShopifyの調査に回答した顧客の14%が、現在および将来的にバーチャル体験を購入すると答えています。
ショッピング体験を充実させることで、マーチャントは従来のオンラインショッピングの枠を超えたサービスを提供することができます。これには以下が含まれます。:
- パーソナライズされたクイズ
- カスタマイズ可能な製品
- 視聴者に合わせたコンテンツ
しかし、それだけではありません。ビデオ、3D、拡張現実または仮想現実(AR/VR)技術はすでに長い道のりを歩んできており、VRショッピングなどの顧客とリアルタイムでエンゲージメントするための必須のウェブサイトツールとして浮上してきています。
ショッピング体験に加えて、マーチャントは視覚的なコンバージョン最適化戦略の挑戦を続けることになるでしょう。またコンバージョン率を改善できるテクノロジーは、案件獲得と収益に劇的な影響を与えるでしょう。
ユーザーが作成したコンテンツ、レビュー、ロイヤリティプログラム、SMS、プッシュ通知などを強化させるアプリは、あらゆるマーチャントの成長を大幅に向上させる機会を持っています。
8. プラットフォーム製品の力に注目
Riley Zammit, デベロッパーサクセスマネージャー2021年には、サードパーティ開発者が自社のコアプロダクトを拡張できるようにするために、APIをあらかじめ公開する「プラットフォーム戦略」を採用するプロダクトが増えそうです。これは、インテグレーションを目的としたAPIの提供とは異なる主旨であることに注意する必要があります。
これにはプラットフォームと、アプリのデベロッパーの両方にとって、共生的なメリットがあります。プラットフォーマーのメリットは、競合他社からの競争上の優位性や市場シェアを守り、維持し、強化するのに役立ち、競争上の障壁を構築することで、自社製品がより多くのオーディエンスに届くようになることです。デベロッパーにとっては、プラットフォーマーのユーザーベースへのアクセスが可能になり、よりシンプルな市場投入戦略が実現します。
プラットフォームアプローチを採用している注目すべき企業は、Shopify、Slack、Zoomの3社と言えるでしょう。例えば、2020年にはShopifyのアプリディレクトリに登録されているアプリの数は、2019年の開始時と比較して66%増加しています。
Shopifyアプリストアのアプリ数は時間経過とともに着実に増加しており、2020年中に66%増加しています。
9. アプリのコストが下がり、より使いやすくなることでアプリカテゴリの変革が起こる
Andrew McCauley, デベロッパーサクセス, チームリード多くの伝統的な実店舗ビジネス、特に中小企業(SMB)は、2020年には店頭での小売が制限されたため、すぐにeコマースへ移行しました。移行したビジネスオーナーの中でも、オンラインストアの設定の容易さ、スピード、低コストを理由に、生き残りをかけたプラットフォームとしてShopifyを選択するケースが増えました。Shopifyマーチャントは、オンラインストアの運営に平均して6つのアプリを使用していることもあり、マーチャントは手軽かつ安価なアプリを求めています。
Shopifyマーチャントは、オンラインストアの運営に平均して6つのアプリを使用していることもあり、マーチャントは手軽かつ安価なアプリを求めています。
Andrew McCauley, Developer Success, Team Lead
このように、新規にeコマースを採用したばかりの中小企業がオンラインで成長していることから、2021年には、アプリ開発とビジネスチャンスに関して、少なくとも以下の2つのうち1つのことが起こる可能性が高いと考えられています:
- 新しいアプリが、ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)のような、伝統的に動作が遅く、高価であったアプリのカテゴリーを、より安くてアクセスしやすいソリューション(特に絞られたオプションしか提供していないアプリ)で破壊する。
- 既存のエンタープライズ向けアプリの開発者は、この新しいターゲット市場のポテンシャルにチャンスを見出し、中小企業向けのマーケットに焦点を移す。
2021年には、2020年中に30%以上の成長を記録した、このeコマースという市場の中で企業がシェアを争うことなると考えられます。そしてマーチャントは、より多くの(そしてより良い)アプリの選択肢を得られるようになるという点で、この戦いで最大の勝者となるでしょう。
アプリ開発ビジネスのトレンドをレバレッジして、マーチャントのニーズに応えましょう。
アプリ開発とビジネスのトレンドに共通の重要な視点の一つは、マーチャントが抱える問題点を解決し、最も役立つアプリを開発できる開発者が長期的に成功を収める可能性が高いということです。
ターゲットユーザーが誰であるか、彼らが日々直面している課題を把握しておくことで、Shopify App Storeにある5,300以上のアプリの中で際立つことができます。
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