商品企画やマーケティングに携わっていると、さまざまな場面においてユーザー視点を持つことが求められます。どんなときもユーザーに寄り添ったビジネスを展開する上で欠かせないのが「ペルソナ設定」です。
集客に苦戦したときや販売実績が上がらないときにも、「ペルソナは誰か」を振り返ることで解決策への糸口が見つかることがあります。この記事では、商品企画やマーケティングを行う上で知っておきたいペルソナ設定のメリットや作り方について詳しく解説します。
ペルソナとは何か
ペルソナとは、一言で言うと架空のユーザー像です。ある商品やサービスを提供するにあたり、その典型的なユーザーはどのような人物かを詳細に設定することをペルソナ設定と言います。
ペルソナ設定では、年齢、性別、居住地などの統計的な属性だけではなく、性格や価値観、行動パターンまでもを具体的に描きます。
出典:Xtensio
ペルソナとターゲットの違い
マーケティングを行う上でペルソナと混同しやすいのが「ターゲット」です。自社のユーザーは誰かを考えるという点ではペルソナマーケティングもターゲットマーケティングも似ていますが、ペルソナマーケティングでは顧客を層というグループではなく、ライフスタイルや価値観に重点を置いて描いた個人として捉えることがポイントとなります。
具体例を挙げてみましょう。ターゲットマーケティングでは、性別や年代などの統計的な属性か市場をいくつかの層に分類し、どの顧客層を狙うかを定めて戦略を考えます。
- ターゲット:30代の女性会社員
一方、ペルソナマーケティングでは、ある顧客層を象徴するユーザー像(ペルソナ)を設定し、その人のニーズを満たすための戦略を考えます。
- ペルソナ:ジル・アンダーソン(35歳)。地域統括部長。既婚で子どもが1人いる。年に4〜8回ほど出張で飛行機を利用。訪れる都市は決まっていて、利用するホテルもいつも同じ。それにも関わらず、毎度予約に時間を割かなければならないことに不満を感じている。
なぜペルソナが必要なのか
ペルソナ設定は精度の高いマーケティングを行う上で非常に有効なプロセスです。
「30代の女性会社員」「都内在住の40代男性」などのように統計的な属性で切り分けた顧客層に向けた戦略を考えようとしても、その人の社会的立場や家族構成などによってライフスタイルや価値観はさまざまです。ユーザー像が不明瞭なままマーケティングを行おうとしても、手がかりが少なすぎて具体的な施策が浮かびません。
D2C (Direct to Customer)に代表される顧客のライフスタイルや価値観に寄り添った商品やサービスが注目を集めているいま、企業がどれほどユーザーの本質を理解しているかがビジネスの勝敗を分かちます。「この人物はこういう生活をしているから、こんな商品を必要としている」「この人物はこういう価値観を持っているから、こんな訴求方法が効果的だ」という議論は、ペルソナを念入りに作り込んで初めて可能になるのです。
ペルソナを設定するメリット
ユーザーの心理や行動パターンを想定しながら戦略を考えるペルソナマーケティングには、さまざまなメリットがあります。
メリット1:ユーザーの困りごとを発見しやすくなる
新たなビジネスを考える際、ユーザーがどのような悩みや問題点を抱えているかを理解すると良い商品やサービスが生まれやすくなります。ペルソナ設定でリアルなユーザー像を作り込めば、ユーザーに寄り添ったブランド戦略を展開できるようになります。
メリット2:意思決定の際に主観を排除できる
効果的な集客方法を考えたり、ブログ記事のテーマを選んだりなど、日々のマーケティング活動ではさまざまな意思決定が必要です。設定したペルソナを常に意識していれば、個人的な好みや都合を持ち込まずにこれらの意思決定ができます。
メリット3:ペルソナをチーム内で共有できる
ターゲットの定義が曖昧でメンバーがそれぞれ異なるユーザー像を思い描いている場合、企画に一貫性がなくなってしまいます。事前にペルソナを設定すれば、メンバー全員が共通の認識を持って企画をスムーズに進めることができます。
ペルソナを構成する要素
ペルソナ設定では、その人物があたかも実在するようにユーザー像の人となりを詳細に設定することが重要です。実際のマーケティング活動に役立つユーザー像を設定する上で重要な要素として、以下の4点が挙げられます。
1)統計的な属性
- 性別
- 年齢
- 職業、役職
- 収入
- 家族構成
- 居住地
2)パーソナリティ
- 性格
- 価値観
- 口癖
- 悩み
- 将来の夢
3)ライフスタイル
- 1日の過ごし方
- 消費活動のパターン
- 情報収集の方法
- 交友関係
- 趣味
4)自社の商品・サービスとの関わり方
- どのようにして知るのか
- どのような点に共感を得るのか
- 購入を妨げる要素は何か
- 購入の決め手となる要素は何か
- 購入後にどのような効果が得られるのか
ペルソナの作り方の手順
ここでは、ネットショップで販売する新商品の企画を行うことを前提に、ペルソナの設定方法を解説します。
ステップ1:情報を収集する
最初のステップでは、ユーザーに関する情報を集めます。情報収集にはさまざまな方法があるので、複数の方法を組み合わせながら多角的な視点から情報を集めると良いでしょう。
- アクセス解析:ネットショップのアクセス解析を行い、ユーザーがどのようなキーワードでサイトを訪問し、どのページにアクセスし、何を購入したのか、あるいはしなかったのかを調査しましょう。アクセス解析と言えばGoogleアナリティクスが有名ですが、Shopifyでネットショップを開設した場合はShopifyストア分析機能を利用してユーザーのサイト内での動きを簡単に把握できます。
- アンケート・インタビュー:類似商品を購入したユーザーを対象に、なぜその商品を購入したか、購入後にどのような効果や不満を感じているかなどをヒアリングすることは、新商品を企画する上で参考になります。過去の販売履歴から該当するユーザーを抽出して調査しましょう。サンプル数が多く必要な場合はアンケート、特定の人に定性的な情報を求める場合はインタビューが適しています。
- ソーシャルリスニング:アンケートやインタビューで引き出すことが難しいユーザーの本音を探るには、ソーシャルリスニングという方法があります。ソーシャルメディアへの書き込みを収集・分析してユーザーの潜在的な要求を把握しましょう。
ステップ2:集めた情報を仕分ける
次に、集めたデータを整理します。膨大なデータを整理する際のポイントは、「悩み」「価値観」「ライフスタイル」「購入の動機」などの切り口で似た傾向のグループを作ることです。このように情報を分類することで、多数のユーザーたちに共通する特性が見えてきます。
ステップ3:ペルソナの形に仕上げる
ユーザーの特性が見えてきたら、いよいよペルソナの形にまとめていきます。集めたデータをもとに基本的な属性、パーソナリティやライフスタイル、自社商品・サービスとの関わり方を具体的に描きましょう。浮かび上がったユーザー像に名前を付けて写真を加えると、ペルソナはより人間味のある、身近な存在となります。また、文章だけでなく図やグラフを使って視覚的にわかりやすい工夫をすることで、チームのメンバーとイメージを共有しやすくなります。
ペルソナ設定のポイント
ペルソナを商品企画やマーケティングで活用するためには、以下のポイントを押さえましょう。
ポイント1:データに基づいて作成する
ペルソナを設定する際に最も避けるべきことは、ユーザー像を想像や理想だけで作り上げることです。ペルソナは架空の人物ではありますが、実在するユーザーのデータに基づいて作成するからこそ、商品企画やマーケティングにヒントを与える存在としての価値があります。情報収集の段階でどれほど綿密な調査ができるかがペルソナの完成度を左右するため、事前の調査には時間をかけて取り組みましょう。
ポイント2:1人に絞らなくても良いが、作りすぎは禁物
多様なユーザーを目にすると、何パターンものペルソナを作りたくなるかもしれません。実際のところ、多様なユーザーを1種類の人物にまとめると、そこに当てはまらないパターンも出てくるため、ペルソナを2人から3人設定し、パターンごとに戦略を考える場合もあります。しかし、ペルソナをいくつも作ってしまうと結局のところユーザー像が定まらないので、ペルソナの作りすぎには気をつけましょう。
ポイント3:カスタマージャーニーを意識する
集めたデータを闇雲に切り貼りしただけでは、ペルソナの完成度としてはもう一歩です。ユーザーはどこで商品を知り、何を考えて行動し、どのように購入に至るのかというカスタマージャーニーを意識しながら情報を組み立てていくと、ペルソナのライフスタイルや価値観のなかに課題を解決するヒントが見えてきます。
ポイント4:設定したペルソナを定期的に見直す
ペルソナは一度作ったら終わりではありません。市場を取り巻く環境が変化するなか、ユーザーのニーズや価値観は日々変わっていくものです。また、一人のユーザーの視点からは見えなかった別のユーザーの視点から気づきを得ることもあります。環境やトレンド、ユーザーのニーズの変化に注視しながら、設定したペルソナが実際のユーザー像を反映しているかどうかを定期的に検証しましょう。
ペルソナを設定してネットショップを成功させよう
ペルソナを設定する一番の目的は、ユーザーの視点に立つことです。商品企画やマーケティングに携わる人の間で、ペルソナ設定の考え方は広く知られるようになってきましたが、ユーザーの実態を把握しないままペルソナを作ってしまうケースもなかには見受けられます。
自社のECサイトを運営している場合、ネットショップはユーザー情報の宝庫です。蓄積された顧客データをそのままにせず、ユーザーのニーズは何か、そのニーズに応えるためにはどんな商品やサービスを提供したら良いかを考えるきっかけとして、ぜひペルソナ設定に取り組んでみてください。
文:廣田 恵
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